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バリ島散策 #4/10
住居
デサの住居構成
バリの伝統的な建物は、人々に古くから伝えられてきた慣習を基に、敷地所有者は、それを尊重し普請を行う。
慣習の規範になるものには、マニュアルがある。そのマニュアルは村の寺院に聖なる文書として記録され管理されている。文書はAsta Kosali と呼ばれ、やしの葉に手書きで記されているという。古代サンスクリット語で、Asta=スキル、Kosali=手 だそうである。いかにもバリらしく、古くからの言い伝えがその源泉になっている。
その文書はウダンギと呼ばれるバリ古来の建築師により建築のシキタリ、建物の形、方向性、建物相互の関係性をまとめたものである。文書は神聖とされるJawa Kunoと呼ばれる文字で書かれているので、、一般人や大工は読むことが出来ない。
建築行為はオーナーの幸不幸に影響が大きいと考えられていて、建物の寸法、プロポーション、建物同士の位置とその距離関係は、これまでの言い伝えにより慎重にとりはかられる。
住居の浄不浄観
住居の敷地は浄、不浄に関する伝統的なシキタリにより、9つのセグメントに分けられる。
東西軸は:
東から西方向に3分割され、各々の名称は Utama,Madya,Nistaとなる。
南北軸は:
北から南方向に3分割され、各々の名称は Utama,Madya,Nistaとなる。
Utama(高位)は:
神の宿る神聖な山の方角で
Nista(低位)は:
不浄とされる海の方向で
その中間がMadyaである。

次に、3分割された、2つのUtama,Madya,Nistaを重ね合わせ9等分とし、分割された各々の領域にヒエラルキーを各付けする。
そのヒエラルキーの:
最高位は東北角=Utama/Utamaで、ここに家族専用の寺院が建立される。
第二位は北側=Utama/Madyaであり、ここにオーナーの主寝室が設けれれる。
最下位は南西角=Nista/Nistaであり、この辺りにごみだめが置かれることになる。
村の道路に沿って、山の方角からは浄な霊気が流れ来たり、海側からは不浄な霊気が上ってくるとされる。このため住居の敷地は、壁で囲まれる。一箇所だけ設けられる入り口には、魔よけのスクリーン壁が邪気が敷地内に入り込まぬよう設けられる。
略図で示されるように以下のような関連性となる。
地理的な形状に関しては、山=Utama、海=Nista、
人体に関しては、頭=Utama、胴体=Madya、脚部=Nista、
建物に関しては、屋根=Utama 、居住部=Madya, 基盤=Nista
敷地の方位観(Nawa-Sanga)
下記のように9分割された敷地に、方位別ヒエラルキーを投影した略図がNawa-Sangaであり、それをを示す。
北方角がカジャ、南方角がケロッド、東方角=カンギン、西方角=クアー、そして中間領域をプセーと称し、最高位カジャ・カンギンに家族専用の寺院を設置する。この寺院は必ず東北の角にしつらえられ、バリ島のもっとも神聖とされるアグン山の方角に合致するようにする。
台所やトイレなどは、対角線の反対側ケロッド・クアー、すなわち南西角方位に設けられる。

方位観を具象化したバリ島住居のレイアウト。



建築とその寸法 (Depa Asta Musti)
バリ島の村落で住居用の敷地に建築を施す場合、巻尺、トランシット、金尺などを使わず建物を建てられていることを知ったとき、とても信じられない思いであった。
建築に使う寸法とは、メートル法、フィートーインチ法、昔の日本で言えば旧尺貫法など、いずれも客観的な寸法を採用している。後になって、バリの場合の独特の寸法の概念を知ることになった。とてもユニークな寸法の測り方なので、それをここに記したいと思う。
まず、温帯の場合の住居は、居間、寝室、台所、トイレなどは、一つの棟の中に集約し、用途、機能性、日当たり、通風、景観、などに考慮しレイアウトを定るのが基本である。
ところが、バリ島の一般的伝統的な住居の場合は、居間、寝室、台所、トイレ、収納庫などは敷地内にバラけることで、異なった用途上の空間、居間、寝室、台所、トイレ、収納庫などは、それぞれ独立家屋として設置される。

それらの独立家屋相互の位置関係、敷地境界線からの寸法は人体寸法を基に定めることになっている。その寸法は標準化されたものではなく、個々のオーナーつまり所有者の体を基に寸法を定める。つまり大きな体格の人はそれ相応な家屋、小さな人は、それに比例したサイズの家屋になる。
人体から来る寸法の概念は、Depa Asta Musti と称され以下のようになる。
下のスケッチ図参照
両手を広げた長さ=Depa
肘から中指までの長さ=Hasta
親指を立てたときの長さ=Musti
親指から小指までの長さ=Lengket
足の長さ=Tampak Hatis
足の幅=Tampak Ngandang
等などである。
人体から来る寸法の概念図。

地鎮祭、住居の棟上とその順序
まず、敷地を浄化するためには、地元の聖職者に依頼してお清めが行われる。
僧侶は村落(デサ)の寺院(プラ)から2本のガラスのボトルに入った聖水を持ち出し、オーナーの額に米粒を聖水とともにぬりつけ、そして少量の聖水をオーナーの口に含ませる。

もう一本のボトルから水を敷地に流がし、土地の悪霊にささげ物をして、悪霊がその敷地から外へ引越しするよう、お祈りをする。

二つの聖水ボトル
その後、あらかじめ召集された地元の数人の女性達が祈りの呪文を大きな声で合唱する。また、鳥かごに入れて持参したすずめ程の大きさの小鳥の首を切り、血を地面にたらし、地鎮祭の終了となる。その後、工事が終わって恒久的な家族専用の寺を完成させるまで、敷地の東北角に仮のプラ(寺)を設けそれを祭る。
僧侶と村の女性合唱チーム

祈りはバリ語



住居
家屋建築の順序
そして、まず敷地の外周を取り囲む外壁工事にに取り掛かる、この後、最初に着手される建物が主寝室である。(図参照)

柱の建てかたにも順序がある !
敷地内の各々の独立した家屋の柱の建て方のとして重要なのが順序である。、東北角を出発点とし、時計の針周りに応じて柱が立てられて行く。

Bale Sakepat

Bale Sakenam

Bale Tiang Sanga

Bale Gede
敷地内を構成する建物

敷地の外周
居住する敷地は、一般的に2mほどの高さのレンガあるいは土塀で囲み、外部との結界を作り、悪霊など好ましからぬ邪気をシャットアウトする。入り口は、前面道路の海側(ケロッド)に一箇所だけ設ける。
1 入り口門(割れ門)
入り口の門構えはCANDI BENTARと称し割れ門となっている。このバリ島独特の割れ門は、家屋や寺院の結界である入り口に必ず設えることになっており、邪気が門を通るのを挟み撃ちにする役割を担っている。
その割れ門を入ってすぐ前面にアリンアリンと呼ばれる衝立状の目隠し壁をもうけ、直進する性質の悪霊をはねかえす役割をもたせる。同時に道路から敷地内が見えないように、プライバシーを担保する役目でもある。

住宅の入り口門(割れ門)

住宅の入り口門(割れ門)
2 SANGA KEMULA
家族固有のお寺であり、敷地の東北の角に他の建物のより高く盛られた基盤の上に設置される。祖先の魂と東北方角の聖なる山々、Gunung Agung, Gunung Satur にささげ、祈りとおそなえる敷地内の聖域。祈りとお供えは毎日早朝には、必ずおこなう。

SANGA KEMULA
3: UMAH METEN
戸主夫婦の主寝室。基本的に8本柱で屋根を支える。レンガの壁は、柱から独立するように配置される。

4 BALE SEKENAM
客間でもあり仕事場にもなる。

5 PAON 台所


6 LUMBUNG 米倉

写真、筆者撮影 スケッチ、筆者作図