東南アジアの水辺の世界 #6/6 メコン川

東南アジアの水辺の世界
#6/6
メコン川(カンボジア)

メコン川氾濫原

プノンペンの国際空港は標高12mにある。雨季に着陸態勢に入ると、限りなく続く水浸しの大地を鳥瞰することになる。バンコクやヤンゴンの上空からは平地一面に耕作された水田を見ることが出来る。これとは全く異なる光景が雨季のプノンペン空港へのアプローチ中に出現する。人の手が入り区画され、一面に水が張られた他の東南アジアの水田地帯とは異なる風景だ。
ここには、おびただしい数のアメーバの様な形をした、人手の入らない沢山の不定形の水溜りが、視界に入ってくる。
これがいわゆる雨季におけるメコン川流域の巨大な氾濫原群である。
この水没をまぬがれ、残されたわずかな土地に、市街地、道路、集落、農地が存在する。

雨期のメコン氾濫原 2006年 筆者撮影

メコン氾濫原、首都プノンペン市郊外 2006年 筆者撮影

カンボジアの首都プノンペンは、メコン川支流のトンレサップ川西岸に位置し、首都は、このような氾濫原に囲まれているのが、空からは見て取れる。
メコン川河口から300km程の内陸に位置するにもかかわらず、空港も含めて市街地の標高は10-15m程度である。市街地の道路に囲まれた住居区域は標高は10m以下であり、雨季には浸水し、水はけが悪い。

乾季 2006年 筆者撮影

只今、川の逆流が起こっています。

左の大河メコン川の増水に伴い、大量の水が行き場を失い、右側のトンレサップ川をさかのぼり逆流中である。さらにあふれ出た水で氾濫原がつくられて行く。
毎年一度の雨季シーズン毎に、これが繰り返される。

雨季のメコン氾濫原  2006年 筆者撮影

プノンペン空港へ着陸態勢に入り、メコン川とトンレサップ川の合流地点を旋回中。

雨季のメコン氾濫原  2006年 筆者撮影

帯状の河岸段丘

メコン川の川岸に発達した帯状の河岸段丘が機上から観察できる。この帯状の小高地に耕作地が造られ、道路と村落が形成され、樹木が植えられる。
首都プノンペン周辺の国道や幹線道路は、ほとんどがこの自然の産物である河岸段丘に沿って設けられている。

メコン氾濫原と河岸段丘 2006年 筆者撮影

メコン川をただよい、二艘の小舟で漁をする漁民たち

2006年 筆者撮影

氾濫原のクリークで水遊びをする農家の子供達

2006年 筆者撮影

乾季になり、氾濫原に網目のように残ったクリーク。

2006年 筆者撮影

水陸両用の漁民家屋

メコン氾濫原の漁民の家屋。雨季で水面が上昇すると水上の家屋となり、乾季で水面が下がると水際に着地し陸上の家屋となる。
家屋の基底部には、大型の数々の浮き袋が装置されている。

メコン氾濫原 2006年 筆者撮影

浮家住居

筆者作図

屋根材

2006年 筆者撮影

屋根裏

2006年 筆者撮影

魚網をつくろう氾濫原の漁民。

淡水魚漁で生計をたてる。

2006年 筆者撮影

床下約4~5メートルの高床住宅。(プノンペン郊外)。

典型的な氾濫原の民家。1階は仕事場と駐車場、住まいは2階に。

2006年 筆者撮影

洪水に備える高床住居の自家製のコンクリ束柱

一般的な農家。典型的な高床住宅。2006年 筆者撮影

トンレサップ湖

5月から11月にかけて、下流のベトナム方面河口の海水満潮時には、例年メコン川は増水し、その膨大な流量が行き場を失う。その大量の行き場を失った水量がトンレサップ川を逆流し、トンレサップ湖に流れ込む。この逆流によってトンレサップ湖の水面の面積は、3倍以上に膨れ上がる。川の逆流により、豊富な養分がメコン川からもたらされ、まれに見る魚類資源の宝庫となる。そして住民の貴重な蛋白源となる。
この地域の家屋は、以上のような自然の営みに寄り添った建て方になっている。

筆者作図

トンレサップ湖の雨季における水面の広がりを、関東平野に投影してみた。長さは房総半島から新潟県に相当する。

トンレサップ水系と関東平野、面積の比較  筆者作図

水上生活者は100万人!!

トンレサップ湖の面積は、乾季2,500km2から、雨季10,000km2に膨張する。琵琶湖の面積が650km2、滋賀県の面積は4,000km2と比較すると、そのスケール感が理解できよう。

水上生活者は100万人といわれ、大都市なみの人口が湖上に生活する。
トンレサップ湖は、メコン川から豊富な栄養分を含んだ水が年一度逆流して来るので、魚類が豊富になり、多くの人口を養うことができるのだ。

2006年 筆者撮影

季節により川の流れの方向が逆になる。

メコン川は、全長4千キロの国際河川で、流域面積は日本国土面積の2倍以上になる。メコン川が増水すると、このトンレサップ川は左側(上流)に逆流し、トンレサップ湖を氾濫させる。乾季になるとトンレサップ湖の水は右側(下流)に流れ、メコン川に戻る。

2006年 筆者撮影

トンレサップ湖畔の陸上高床家屋。満水期には床下まで水量が増し、舟を直接付ける事が出来る。

筆者作図

トンレサップ湖の水上家屋。

水面の上昇に従い集落全体が水面に浮き上がる。

筆者作図

水位が上がるとそれに伴い上昇する浮揚式レストラン。

左奥は高床式レストラン。 右手前は浮揚式レストラン。

筆者作図

浮き稲

カンボジアを数回訪問後のある日、現地の人から浮き稲の存在を教えてもらい興味をもった。日本では聞いたことが無い稲である。浮き稲は氾濫原から水が退いた時をみはらかって、地面に種を直播きする。メコン川の増水により冠水し、徐々に水位が上昇するのにしたがって、新しい葉の出る部分がつねに水面上に出るように伸長する。水深は4mに達しても、先端部分は水没を免れ、水面にただよう。収穫の時期が来ると、稲穂を水上に繰り出した舟から収穫する。インディカ米の一種である。

プノンペンの米問屋に行き、数キロの浮き稲米をもとめ、この米を炊いて貰い食してみたが、おいしいといえるほどのご飯ではなかった。機械化・合理化のできない農業で、労働生産性が低く、美味ではないが、観光資源として存在続けて欲しい。

浮き稲

ameblo.jp より

一面の氾濫原の浮き稲。ボートにより稲の先端部分の稲穂をカッターで刈り取り収穫する。一毛作である。バリ島の灌漑のゆき届いた棚田は、三毛作であるので、浮稲の効率が悪いことが解る。

kyoritsu-wu.ac.jp より

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