バリ島散策 #7/10 建築素材-2

バリ島散策 #7/10
建築素材 #2
木質系

バリ島の住居やホテル建築は、驚くことに、21世紀になった現在でも地場の建築素材を使い続けている。いわゆる地産地消である。

ほとんど、これらの天然素材は、(一部インドネシアの他の島から持ち込む場合を除いて、)この5.800km2の島内から調達される。遠隔地から運搬し輸送することによって生じるCO2を低くすることで、カーボンフートプリントが、世界の他の地域に比較して極めて低い、という典型的な低CO2排出社会の好事例地域ということが出来よう。

柱と梁の木材

(1) チーク材

バリ島の一般建築は、基本的に木構造である。チーク材が好んで使われるが、近年はそれらの入手が難しくなりつつある。チークの代わりにパームやし材が使われる例もある。

バリ島特有の独立柱の形状。
この形状の源流は、インド各地の古代ヒンドゥー建築に見ることが出来る。

筆者撮影

バリ島特有の独立柱の形状。

古代インド亜大陸の柱に込めた造形手法が、水脈の源となり、脈々とバリ島にまで流れ着いた。(柱の造形の源に関しては、筆者の建築観察から導び出された個人的意見である。)

筆者作図

(2) ナンカ材

バリ島には野外の木工所があちこちに点在している。筆者がたまたま訪れた木工所で、ベテランの大工が一人で、汗をかきながら作業をしていた。動力機械はなく、すべてが手作業である。すでに成型されていた木柱の素材について尋ねると、以下のような説明があった。

寺院など神聖な建物の柱にはナンカ(ジャックフルーツ)が好んで使用される。ナンカ材はインドネシアのガメランの楽器や、ヒンズー教寺院の供え物用の家具など神聖とされる物にも使われる。ということであった。(下写真前方)

筆者撮影

柱の高さ寸法は、建主の体の寸法から道び出される。
柱どうしの間隔も同様にオーナーの身体寸法を用いる。

筆者撮影

(3) コーヒーの老木

収集され木工所の片隅にあったコーヒーの木。形状が面白く、どこかに使えそうだ。

筆者撮影

屋根材

1.屋根の形状は基本的に方丈か寄棟で、切妻や片流れはない。

筆者撮影

2. 屋根の構造材には基本的な部分には木材が使用され、残りの副次的部分には竹が使用される。

筆者撮影

筆者撮影

3. 竹材の垂木は放射状に配列されるのがほとんどである。

筆者撮影

(4) アランアラン屋根の素材

屋根葺材はバリ島の伝統に沿って、アランアランと呼ばれる草が使われる。
このアランアランという素材をはじめてまじかに見たのは1980年代のはじめごろだったろうか。

インド南部、タイやマレーシアではニッパやしの葉が一般的に屋根葺き材として使われている。河口のマングローブ湿地帯に群生している。茎はなく葉は地面から直接はえ長さは3-10mで、屋根葺き材としては、通風、断熱の特徴があり理想的な素材である。

筆者撮影

これに対して、アランアランはヤシ系とはまったく異なる植物で、ジャワ島、バリ島、ロンボク島などの原野に群生する先のとがった細長い葉で、高さは3m程度まで成長する。

葉を乾燥させ、竹串に短冊状に固定させ、ひとつのエレメントとし、これらを重ねることによって屋根葺き材としての防水機能を持たせる。

アランアラン材 筆者撮影

この屋根葺きエレメントを重ね合わせる際の寸法は、10cmぐらいの間隔が必要最少限である。この重複幅が短いほど長持ちし、また保温、防水などにすぐれる。10年前後に一度程度の吹き替えが必要である。

筆者撮影

このアランアラン材の特徴は、軒線に繊細さを出すことが出来ること。寄せ棟屋根の棟線の仕上げが優美に収められること。そして何より屋根伏せ、天井で、植物性繊維が芸術的な視感を作り出し、繊細でなごやかな空間を表現出来ることにある。

筆者撮影

アランアラン材、工事の手順。多人数で共同で行なう。

筆者撮影

魔除けの瓦をのせた完成後の筆者設計ウブドグリーンリゾート入り口門。

筆者撮影

アランアラン屋根のリゾート。バリ島サヌール地区。

筆者撮影

棟には魔除け瓦を乗せる

筆者撮影

円錐形屋根を作る

竹の先端を削ぎ鋭角状にして頂点を納めるための準備作業。

筆者撮影

筆者撮影

共同作業で、円錐形アランアラン屋根を葺く。筆者設計ウブドグリーンリゾート内レストラン。

筆者撮影

完成した円錐形アランアランの内側。重ね合わせの巾は約5cmになっていて密度が高い。

筆者撮影

(5木っ端葺き屋根

バリ島では、600m以上の比較的標高の高い地域の寺院の庫裏などの屋根材として使用される。多くは木陰を作り出す建物の屋根で使われる。雨後の保水効果によりコケなどが生えだし、屋根と自然が一体化し、調和した雰囲気を作り出す。

筆者撮影

筆者撮影

筆者撮影

筆者撮影

(6) ツタで覆われた屋根

バリ島で1980年代に、建物全体が「ツタ」で覆われた住居を発見した。この様な窓や入り口以外植物で覆われた例は貴重であったので写真に収めた。

人工物である建築の上に植物が覆い被さり、自然が人工物に優勢になってしまった好例であろう。

筆者撮影

ドア枠とドア

バリ島の人々は、家屋の入り口となる構えに、多大なエネルギーを注ぎ、門構えそのものを芸術作品に仕上げる。デザインのバリエーションは豊富である。

筆者撮影

筆者撮影

筆者撮影

筆者撮影

竹の建築

現代建築の文脈で最初に竹を用いたのは、コロンビアで数多くの竹建築を設計しヨーロッパにも影響を及ぼし、竹建築を広めたSimon Velezらであると考えられる。そして、彼の竹建築の実績は、バリ島に住む欧米人のデザイナーにも影響を与えた。

グリーン・スクール

ウブド近郊にある「グリーン・スクール」の創立者夫婦は、南米コロンビア発祥の竹建築から強い影響を受け、下写真のような竹のみを素材にした学校を造った。

筆者撮影

グリーンスクールでは、成長がはやく環境に優しいという理由から、ほとんど全ての建造物に竹が使われている。大空間の校舎以外、だけではなく、家具机や椅子、川に架けられた橋もすべて竹製である。そしてこの竹でできた教室は、大黒柱以外は、竹の柱のみによって支えられ、オープンな雰囲気で風通しがよく、暑くてもエアコンなしである。

流れる曲線のユニークで美しいデザインに世界中から注目が集まり、評判となった。筆者が訪れた頃は完成直後で、見学することが出来たが、その後参観には制限が設けられるようになった。

筆者撮影

筆者撮影

筆者撮影

筆者撮影

竹の素材は、熱湯で茹でたり、燻製したりして竹に含まれる糖分を取り除き、蟻や虫などの害を防止した後、はじめて建材となる。竹材は虫害の他火災にも弱いので、大型の公共スペースに使うのは冒険である。

田んぼの中の竹建築レストラン

柱、梁、すべてが竹で作られたレストラン、ウブッドの南郊

筆者撮影

筆者撮影

筆者撮影

竹製のレストランに竹製の家具

ウブドの近くのジャングルの中にあった竹製オンパレードのレストランを発見!とても印象に残ったので写真を紹介しよう。

総竹造りの入り口ホールとレセプション。

筆者撮影

竹製ダイニング・テーブル。

筆者撮影

竹を割って内部を見せ、ガラス越しに自然の作り出した造形を楽しむ。

筆者撮影

ウブドの総竹作りレストラン。竹のオブジェ。

筆者撮影

ガラスの屋根に遮光を葦の茎で施した洗面所の天井。

筆者設計ウブドグリーンリゾート内スパ。

筆者撮影

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